螢火蟲、燈《ひ》を提《ひさ》げたり、 月《ぐゑつ》色《しょく》裏《り》に在りて、輕《かる》輕《がる》として飛び舞ひたり、 愛人を期《き》盼《はん》したり、一《いつ》份《ぶん》の愛情を追ひ尋ねん。
螢火蟲、燈を提げたり、 月色裏に在りて、輕輕として眼《がん》睛《せい》を眨《たた》きたり、 黑《こく》夜《や》裏《り》に在りて等《とう》待《たい》し、一份の光明を尋ね找《さが》さん。
大典ハ是レ在リテ[㆓]太和殿ニ[㆒]挙行スル的(もの)ナリ。在リテハ[㆓]大典之前ニ[㆒]、照ラシ[㆑]章ニ、要ス[㆘]先ヅ在リテ[㆓]中和殿ニ[㆒]接[㆓]―受シ領侍衛内大臣們(ら)的(の)叩拝ヲ[㆒]、然ル後ニ再ビ到リ[㆓]太和殿ニ[㆒]、受ケルヲ[㆗]文武百官ノ朝賀ヲ[㆖]。我被(かう)ムルコト[㆓]他(かれ)們ノ折騰シ了(をは)レルヲ[㆒]半天、加ヘテ[㆑]上ニ那天ハ天気奇冷ナリ、因リ[㆑]此ニ、当リ[㆘]他們把(もつ)テ[㆑]我ヲ抬(もた)ゲ[㆓]―到リ太和殿ニ[㆒]、放チ[㆓]―到レル又タ高ク又タ大的(なる)宝座ノ上ニ[㆒]的(の)時候ニ[㆖]、早クモ超[㆓]―過―了(せり)我的耐性限度ヲ[㆒]。我父親‘単膝’(たんしつ)側身シ、跪(ひざまづ)キテ在リ[㆓]宝座ノ下面ニ[㆒]、双手シテ扶(たす)ケ[㆑]我ヲ、不[㆑]叫(し)シメ[㆓]我ヲシテ乱動セ[㆒]。我却(かへ)ッテ‘掙扎’(さうそつ)シ著(ちゃく)シテ‘哭喊’(こくかん)シ、「我不[㆑]挨(あ)ラ[㆓]‘這児’(ここ){ニ}[㆒]、我要ス[㆑]回ルヲ[㆑]家ニ、我不[㆑]挨這児、我要スト[㆑]回[㆑]家」父親急ギテ得タリ[㆓]満頭是レ汗ナルヲ[㆒]。文武百官的三跪九叩ハ、没(な)ク[㆑]完(をは)ル没ク[㆑]了(をは)ル、我的哭叫也(も)越(いよいよ)来リテ越響キ。我父親只ダ好ク哄(だま)シテ[㆑]我ヲ説クノミ、「別(なか)レ[㆑]哭スル別[㆑]哭、快(すみ)ヤカニ完了セン、快完了セント。」
智深 また 酒興 に 乗着 し、 都 て 外面 に 到 り 看 る 時 、 果然 綠楊樹 上 、 一箇 の 老鴉巣 あり。
衆人 道 う、「 梯子 を 把 りて 上 り 去 つて 拆了 せば、 也 耳根 の 清浄 を 得 ん。」
李四 便 ち 道 う、「 我 你 が 与 に 盤上 り 去 らん、 梯子 を 要 せず。」と。
智深 相 し 了 する 一相 、 走 つて 樹前 に 到 り、 直綴 を 把 つて 脱了 し、 右手 を 用 て 下 に 向 い、 身 を 把 つて 倒 まに 繳着 <注、 纏 わり 着 くる 也 。 本 へ 反 る 勢 をなしてというも 非 也 >し、 却 て 左手 を 把 つて 上截 < 注 、 上截 は 上 の 方 を 捉 らえとどめる 也 。>を 扳住 し、 腰 を 把 つて 只 一趂 す< 注 、 趂 は 趁 に 同 じ、 追 う 也 。 勢 に 乗 じて 追求 するを 趁 という、ここは 腰 をのしたる 也 >、 那 の (一 )株 の 綠楊樹 を 将 て 根 を 帯 びて 抜起 す。
衆 溌皮 見 了 つて、 一斉 に 拝倒 して 地 に 在 り、 只 叫 ぶ、「 師父 は 是 れ 凡人 に 非 ず、 正 に 是 れ 真 の 羅漢 の 身体 。 千万 斤 の 気力 無 くんば、 如何 ぞ 抜 き 得 起 さん。」
智深 道 う、「 甚 の 鳥緊 を 打 さん<注、 緊 はしつかり 也 。 切 也 。 鳥 は 軽 しめ 侮 る 辞 。 打 はなす。 一句 、なんでもないことというなり。>。 明日 都 洒家 が 武 を 演 じ 器械 を 使 うを 看 よ。」
衆 溌皮 当晩 各自 散 じ 了 る。 明日 より 始 と 為 して、 這 の 二三十 個 の 破落戸 、 智深 を 見 て 匾匾的 に<注、ひれふして> 伏 し、 毎日 酒肉 を 将 ち 来 りて 智深 を 請 い、 他 の 武 を 演 じ 拳 を 使 うを 看 る。
這裏 には 宝玉 は 忙忙的 衣服 を 穿了 出 て 来 ると、 忽 ち 頭 を 抬 げて 林黛玉 が 丁度 前面 を 慢慢的 走著 のを 見 たが、どうも 拭涙 る 様子 があるので、 便忙 趕上来 て、 笑 いながら、
「 妹妹 那裏 に 往去 なさる、して 又 怎麼 で 哭了 ます、 是誰 か 你 に 得罪 でもしたのではありませんか。」
説 われて 林黛玉 は 回頭 つて 見 ると 宝玉 なので、 勉強 て 笑 をつくり、
「 好好的 、 我 何曽 で 哭了 ましょう」、と 道 う。
宝玉 は、「 你瞧瞧 、 眼睛 の 上 の 涙珠儿 は 未 だ 乾 ているではありませんか、 撒謊 てはいけません」と、 説 い 一面 、 禁不住 手 を 抬起来 他 の 替 に 涙 を 拭 いてやつた。
林黛玉 は 忙 く 幾歩 か 後 に 退了 、
「 死 を 要 ね。 什麼 で 這麼 に 動手動脚 。」
すると 宝玉 は 笑 いながら、
「 説話 に 忘了情 、 覚 わず 手 を 動 す 様 なことをして 顧不的死活 ました」、と 謝 りを 道 うた。
林黛玉 は、
「 你 が 死 んでも 倒 て 什麼 も 值 ますまいが、 只是 甚麼 か 金 とか、 麒麟 とか 云 う 様 な 物 を 丟下了 なら、それは 怎麼様 でしょう。」
この 一句話 は、 又 宝玉 を 急 と 説 わせ、 趕上来 て、
「 你 が 這話 を 説 いなさるは、 到底 是 は 我 を 呪 うのですか、 還是 は 我 を 気 のですか。」
林黛玉 は 又 そう 問 われて、 方 に 前日 の 事 を 想 え 起 して、 遂 に 自 ら 自己 も 造次 なことを 説 うたと 悔 いて、 忙 く 笑 いながら、
「 你 もそう 著急 なさるな、それは 我 が 説 い 錯了 ましたのです、 這 に 什麼的 そう 筋都暴起来 、 急的一臉汗 おさわぎなさることも 御座 いますまい」、と 説 い 一面 、 禁不住 近前 て 手 を 伸 し 他 の 面上 の 汗 を 拭 いてやつた。
宝玉 は 半天 瞅了 て 居 たが、 方 て「 你放心 」との 三個字 を 説道 た。
林黛玉 は 聴 いて、 也 半天 怔了 居 て、
「それじゃ 我 に 什麼 か 放心 のできぬ 的 でもありますのですか。 我 は 這話 が 明白 ません。 你 は 倒 て 怎麼 を 放心 とか 不放心 とか 説説 なさるのですか。」
すると 宝玉 は 一口気 嘆息 して、
「 你 が 果 して 這話 が 明白 ませぬ 様 では、 難道 我 が 素日 你 の 身上的 心 て 在 たことは 都 な 用錯了 でした、 你 の 意思 でさえも 体貼 し 著 ぬ 様 では、 我 が 天天 你 に 生気 たのは 難怪 な 訳 です。」
林黛玉 は、
「 果然 我 は 放心 とか 不放心 とか 話 は 明白 がゆきません。」
宝玉 は 点頭 きながら 嘆 じて、
「 好妹妹 、 你 は 別哄我 。 若 し 果然 這 の 話 が 明白 がゆきませぬ 様 では、 但 だ 我 の 素日 の 意 が 白用 になるばかりではありません、 且 つ 你 が 素日 我 に 待 する 意 にも 也 都 く 辜負 様 なわけになります。それは 你 が 皆 総 て 不放心 な 原故 、 纔 に 你 の 一身 の 病 を 弄了 ている 様 なわけでしょう。 但 だ 凡 そ 寛慰些 ば、 這 な 病 でも 一日 は 一日 似 重 くなると 云 うことは 得 りません。」
林黛玉 は 這 の 話 を 聴 くと、 宛 も 轟雷掣電 様 に 感 じ、 細細 之 を 思 うと、 竟 に 自己 の 肺腑中 から 掏 り 出 して 来 たよりも、 還 お 懇切 な 覚 がして、 竟 に 万句 の 言語 を 満心 て 説 うと 要 みても、 只是 半個字 も 吐 えず、 却 て 怔怔的 他 を 望著 見 て 居 た。
此時 宝玉 の 心中 にも 也 万句言詞 があつても、 一時 那一句上 から 説 い 起 したものか 考 えがつかず、 却 て 也 怔怔的 黛玉 を 望著 て、 両個人 は 又 半天 怔了 して 居 るばかりであつた。
頃之 すると 林黛玉 は 只 だ 咳了一声 して、 覚 えず 其 両眼 から 涙 を 滾下 ながら、 身 を 回 して 走 うとした。
宝玉 は 忙 ぎ 上前 いでて 拉 き 住 めて、
「 好妹妹 、 且 あ 略 と 站住 なさい、 我 の 一句話 を 説 いてから 再走 なさい」と 説道 た。
林黛玉 は 涙 を 拭 き 一面 、 手 で 推 し 開 けて、
「 什麼 説様 なことはありませんし、 你的話 は 我 早 知道 て 居 ます」と、 口裏説著 、 頭也不回竟 と 去了 つた。
一条ノ大河波浪寛(ゆる)ク、風吹ケバ稲花香シクス[㆓]两岸ヲ[㆒]。我ガ家就(すなは)チ在(○)岸上ニ住ミテ、聴キ[㆓]―慣レ―了(た)リ艄公的(の)号子ヲ[㆒]、見[㆓]―慣レ―了リ船上的白帆ヲ[㆒]。這(ここ)是レ美麗ナル的(○)祖国ナリ、是レ我ガ生長セシ的(○)地方ナリ。在(○)這ノ片ノ遼闊ナル的(○)土地ノ上ニ、到ル処都ベテ有リ[㆓]明媚ナル的(○)風光[㆒]。
姑娘好ク像(に)[㆓]花ト一様ニ[㆒]、小伙ノ心胸多キニ寛広ナリ。為ニ[レ]了ルガ[㆔]開―[㆓]闢シ新天地ヲ[㆒]、喚―[㆓]醒シ―了リ沉睡セシ的(○)高山ヲ[㆒]、譲メ[㆔]那ノ河流ヲシテ改―[㆓]変セ了[㆕]リ模様ヲ[㆒]。這(ここ)是レ英雄的ナル祖国ナリ、是レ我ガ生長セシ的(○)地方ナリ。在(○)這ノ片ノ古老ナル的(○)土地ノ上ニ、到ル処都ベテ有リ[㆓]青春的(の)力量[㆒]。
好キ山好キ水好キ地方ナリ、条条ノ大路都ベテ寛暢ナリ。朋友来了ラバ有リ[㆓]好キ酒[㆒]、若シ是レ那ノ豺狼来了ラバ、迎[㆓]―接スル它レヲ[㆒]的(もの)有リ[㆓]猟槍[㆒]。這(ここ)是レ強大ナル的(○)祖国ナリ、是レ我ガ生長セシ的(○)地方ナリ。在(○)這ノ片ノ温暖ナル的(○)土地ノ上ニ、到ル処都ベテ有リ[㆓]和平ナル的(○)陽光[㆒]。
可シ[レ]嘆ク。秋鴻ハ折レバ[レ]單(ひと)リニ復タ難ク[レ]雙(なら)ビ、痴人ハ痴怨ニ恨ミ迷狂ス。只ダ因リテ[㆔]那(あ)ノ邪ナル牲(せい)祭(せい)伏―[㆓]定スルニ禍殃ヲ[㆒]、若シ非ズンバ[㆓]巾幗拔劍スルニ[㆒]人〻皆命ヲ喪(うしな)ハン。
凡緣朦朦トシテ仙緣滔{々タリ}、天倫散リ去レバ絳府邀フ。朱絲ヲシテ縛リ絕テ爛柯ノ樵(きこり)、雪泥鴻跡モ遙ナリ。鶴歸レバ不[レ]見エ[㆓]昔ノ華表ヲ[㆒]、蛛絲枉ゲテ結ビテ魂幡飄フ。因果紅塵渺渺タリ。煙消ユルノミ。
「神女劈(わ)リケリ[レ]觀ヲ」到レバ[㆓]這(こ)裏(こ)ニ[㆒]本ヨリ該(まさ)ニ‹べ›«シ»[レ]‘接[㆓]―近’ス尾聲ニ[㆒]。但ダ今日我レ再ビ添ヘ[㆓]一筆ヲ[㆒]、‘唱(うた)ヒ―[㆓]與ヘテ’諸位ニ[㆒]聽カシメン。
曲高ケレドモ未ダ‹あら›«ズ»[㆓]必ズシモ人不ンバ[一レ]識ラ、自ヅカラ有ラン[レ]‘知[㆔]―音’和スル[㆓]清詞ヲ[㆒]。紅纓獵獵トシテ劍流星ノゴトク、‘直[㆓]―指’シ怒潮ヲ[㆒]洗ヒ[レ]海ヲ清メタリ。
彼ノ時鶴歸レバ、茫茫タル天地ニ無ク[㆓]依靠[㆒]、孤身ニテ離レ去リケリ。今日再ビ會ヘバ、新朋舊友坐リ[㆓]滿堂ニ[㆒]、共ニ聚(あつま)リタリ[㆓]此ノ時ニ[㆒]。
可シ[レ]嘆ク 秋鴻折單シテ復タ難ク[レ]雙ビ、癡人癡怨恨ミテ迷狂ス。只ダ因リ[㆔]那(そ)ノ邪(じや)牲(せい)祭(さい)伏セ―[㆓]定ムルニ禍殃ヲ[㆒]、若シ非ズンバ[㆓]巾幗ノ拔クニ[一レ]劒ヲ人ハ皆命ヲ喪フ。凡緣濛濛トシテ仙緣滔(たう)タリ、天倫散リ去リテ絳府ニ邀(もと)メラル。朱絲縛ルコト絶エ爛柯ノ樵(きこり)、雪泥鴻跡遙カナリ。鶴歸リテ不[レ]見[㆓]昔ノ華表ヲ[㆒]、蛛絲枉ゲテ結ビテ魂幡飄(ひるがへ)ルノミ。因果紅塵渺渺ト、煙消ス。『神女劈ク[レ]觀ヲ』到リテ[㆓]這(こ)裏(こ)ニ[㆒]本該(まさ)ニ‹べ›«シ»[㆔]接―[㆓]近ス尾聲ニ[㆒]、但(しか)レドモ今日我再ビ添ヘテ[㆓]一筆ヲ[㆒]、唱ヘテ與ヘテ[㆓]‘諸位’(なんぢら)ニ[㆒]聽カシメム。曲高ケレドモ未ダ[㆓]必ズシモ人不ンバアラ[一レ]識ラ、自(おのづか)ラ有リ[㆓]知音[㆒]和ス[㆓]清詞ヲ[㆒]。紅纓ハ獵獵トシテ劒ハ流星、直―[㆓]指シ怒潮ニ[㆒]洗ヒテ海(かい)清(せい)トナセン。彼ノ時鶴歸リ、茫茫タル天地ニ無ク[㆓]依(い)靠(かう)[㆒]、孤身ト離レ去リキ。今日再ビ會ヒ、新朋舊友坐スルコト滿チ[レ]堂ニ、共ニ聚マル[㆓]此ノ時ニ[㆒]。
我レニ有リ[㆓]一段ノ情[㆒]呀(や)、唱(うた)ヒテ―[㆓]畀(たま)ヒ拉(なんぢら)諸公ニ[㆒]聽カシメン。諸公ノ各位、靜メ呀(よ)靜メ―[㆓]靜メ心ヲ[㆒]呀。讓レ[レ]我レニ末(ば)唱ハシメ[㆓]一隻ノ「秦淮ノ景」ヲ[㆒]呀(よ)。細細タリ‘那個’(そ)レ到到タレ末(ば)、唱ヒテ―[㆓]畀ヒ拉諸公ニ[㆒]聽カシメン呀(や)。秦淮緩緩ト流レ呀、盤古カラ到ル[㆓]‘如今’(いま)ニ[㆒]。江南ノ錦繡、金陵ノ風雅ノ情呀。瞻園ノ裏ニ、堂闊(ひろ)ク宇深ク深シ呀。白鷺洲ノ水漣漣トシテ、世外桃源ナリ呀。
朱武等三箇頭領跪下道ふ、哥哥你は是乾淨的人、我等が爲に連累すること休、大郎、索を把來、我が三箇を綁縛出去て賞を請ひ免得うべし、你を累了しては、好看ならず。
撲的只一拳、正に鼻子の上を打ち、打ち得鮮血迸り流る。鼻子は歪みて半辺に在り、却も便ち個の油醤舗を開き了るに似たり、醎的、酸的、辣的、一発に都滾れ出で来たり。
螢火蟲、燈《ひ》を提《ひさ》げたり、 月《ぐゑつ》色《しょく》裏《り》に在りて、輕《かる》輕《がる》として飛び舞ひたり、 愛人を期《き》盼《はん》したり、一《いつ》份《ぶん》の愛情を追ひ尋ねん。
螢火蟲、燈を提げたり、 月色裏に在りて、輕輕として眼《がん》睛《せい》を眨《たた》きたり、 黑《こく》夜《や》裏《り》に在りて等《とう》待《たい》し、一份の光明を尋ね找《さが》さん。
金文京『中国小説選』
諸(しょ)路(ろ)ノ軍(ぐん)馬(ば)、多(た)少(しょう)不[㆑]等(ひと)シカラ、有[㆓]三万ナル者[㆒]、有[㆓]一二萬ナル者[㆒]、各(おのおの)領(ひき)[㆓]イテ文武官将ヲ[㆒]投ジテ[㆓]洛陽ニ[㆒]来タリ。
‘且説’(さて)、一路ノ軍馬アリ、乃チ北平ノ太守、統―領シ幽州ヲ、官ハ拝セル奮武将軍ヲ、薊(けい)侯(こう)、覆(ふく)姓(せい)ハ公孫、単名ハ瓚(さん)、遼西令支ノ人也。統領シテ精兵一万五千人ヲ起発シ、路経(よ)リ徳州平原県過(よ)ギル。軍馬正行之(の)間、遙カニ見レバ桑樹ノ叢中ニ一面ノ黄旗アリテ、数騎来タリ迎エ、遠遠ニ看(かん)見(けん)シテ公孫瓚ヲ下リル馬ヲ。瓚視レバ之、乃劉玄徳也。瓚亦下馬問曰、「賢弟何故在此。」玄徳曰、「兄長失忘。旧日蒙兄保委備為平原県令、因此出城間行、偶遇尊兄到此、乃大幸也。就請兄長入城歇馬。」云云。瓚指関、張而問曰、「此何人也。」玄徳曰、「此是関某、張飛、備結義兄弟也。」瓚曰、「乃同破黄巾者乎。」玄徳曰、「皆此二人之力也。」瓚曰、「有何爵禄。」玄徳答曰、「関某為馬弓手、張飛為歩弓手。」瓚曰、「呀、空埋了大丈夫耳。今董卓作乱、天下諸侯共往誅之。賢弟可棄其為官、一同討賊、力扶漢室、若何。」玄徳曰、「願往。」張飛曰、「当日若容我殺了此賊、免有今日之事。」関某曰、「事已至此、収拾前行。」玄徳、関、張引数騎跟公孫瓚来。
且説那十八路諸侯、那一路先到。此人身長八尺、英雄双全、横跨三江、威服六郡、富春人也。姓孫、名堅、字文台。後人有詩賛文台曰、
誰道江南少将才
明星夜夜照文台
欲誅董卓安天下
為首長沙太守来
曹操接著孫堅。衆諸侯陸続皆到、各自安営下寨、連接二百余里。操乃宰牛殺馬、大会諸侯、商議進兵之策。太守王匡曰、「今奉大義、必立盟主,衆聴約束、然後進兵。」逓互相譲。操曰、「袁本初四世三公、門多故吏、漢朝名将之裔、可為盟主。」紹再三推辞。衆皆曰、「非本初不可為也。」紹方応允。
次日、築台三層、遍列五方旗幟、上建白旄黄鉞、兵符将印、請紹登壇。紹整衣佩剣、慨然而上、焚香再拝。其盟曰、
漢室不幸、皇綱失統。賊臣董卓、乗釁縦害、禍加至尊、虐流百姓、大懼淪喪社稷、剪覆四海。紹等糾合義兵、並赴国難。凡我同盟、斉心戮力、以致臣節。隕首喪元、必無二志。有渝此盟、俾墜其命、無克遺育。皇天后土、祖宗明霊、実皆鑒之。
読畢、歃血。衆等因其辞気慨慷、遂皆涕泣横流。聞其言者、雖卒伍廝養、莫不切歯踴躍、共思誅討逆賊董卓。
及歃血已罷、下壇。衆皆扶紹升帳、侍坐。各施礼罷、両行依爵位年歯、分列而坐。操行酒数巡、言曰、「今日既立盟主、各聴調遣、同扶天下、勿以強弱計較。」紹曰、「吾無圧衆之心、汝等推戴我為盟主、有功者必賞、有罪者必罰。国有常刑、軍有紀律、各宜遵守、毋得違犯。」衆皆曰、「惟命是聴。」紹曰、「吾弟袁術総督糧草、応付諸営、無使有欠。誰肯為前部先鋒、直抵沂水関下、誘賊相持。余皆各拠険要、以為接応。」長沙太守孫堅出曰、「堅雖不才、願為前部。」紹曰、「文台勇烈、可称此職。」随即捧杯作賀。連忙引本部人馬、大刀闊斧、奔沂水関来。有守関将差流星馬往洛陽丞相府告急。
董卓自専大権之後、毎日飲宴、更深方散。李儒接得告急文字、径来稟覆丞相。董卓大驚、急聚衆将商議。卓曰、「今袁紹、曹操聚各路太守軍馬直抵関前、衆将有何妙計。」温侯呂布挺身出曰、「父親勿慮。吾覷関外衆多諸侯如草芥、親提虎狼之師、尽斬其首、懸於都門、呂布之願也。」卓大喜曰、「吾有奉先、高枕無優矣。」言未絶、呂布背後一人高声而出曰、「殺雞焉用牛刀。不必温侯有労虎威。吾観斬衆諸侯首級、如探囊取物。」卓視之、其人身長九尺、面如噀血、虎体狼腰、豹頭猿臂。関西人也、姓華、名雄、卓帳前第一員驍将。卓聴其言大喜、加為驍騎校尉、撥馬歩軍五万、一同李粛、胡軫、趙岑連夜便起、飛奔沂水関来。
却説衆諸侯內、有済北相鮑信、尋思、「孫堅為其前部、若乾了大功、都不顕我等。」暗撥其弟鮑忠、先将馬歩軍三千、径抄小路、直到関下搦戦。華雄引鉄騎五百、飛下関来、大喝、「賊将休走。」鮑忠急待退、被華雄手起刀落、斬鮑忠於馬下、生擒将校極多。華雄飛馬、親提鮑忠首級、直来相府献功。卓賜雄重賞、又与鉄甲馬軍一千。雄辞董卓、上馬、部領出城、投沂水関扎住大寨。卓使人加雄為都督、且伝曰、「慎勿下関軽敵。」
却説孫堅引四将直至関前。那四将。第一個、右北平土垠音銀人、姓程、名普、字徳謀、使一条鉄脊蛇矛、東呉第一員上将。第二個、姓黄、名蓋、字公覆、零陵人也、使鉄鞭。第三個、姓韓、名当、字義公、遼西令支人也、使口大刀。第四個、姓祖、名茂、字大栄、呉郡富春人也、使双刀。孫堅披爛銀鎧、裹赤幘、赤幘、即蜀錦抹額之類也。騎花鬃馬、横古錠刀、指関上而罵曰、「助悪匹夫、何不早降。」華雄副将胡軫曰、「某下関必斬孫堅首。」雄与兵三千、排列出関。堅見胡軫出馬、却欲自出。程普飛馬挺矛、直取胡軫。鬥不数合、程普刺中胡軫咽喉、死於馬下。一陣直殺上関、関上矢如雨下。孫堅引兵回至梁東屯住。
堅使人於袁紹処報捷、就於袁術処催糧。或譖、「孫堅乃江東之猛虎、若打破洛陽、殺了董卓、正是除狼而得虎也。今不可与糧、彼軍必散。」術聴之、不発糧草。堅軍欠食、軍中自乱。
細作報上関来。李粛与華雄商議、「我引一軍従小路下関、襲孫堅寨後。汝可半夜到堅寨、必然擒矣。」雄喜、連晩教軍飽餐一頓、披掛了下関。是夜月白風清。比及到堅寨、時已是半夜、鼓噪直進。堅披掛、慌忙上馬、正遇華雄。両馬相交、鬥不到数合、寨後李粛軍到、竟天放火。孫堅軍人無糧食、四下裡乱攛。堅撥回馬走、四下裡喊声不絶。程普、黄蓋、韓当各不相顧、止有祖茂跟定孫堅、与数十騎突囲而出。背後華雄追堅、堅勒回馬又戦十余合。堅敗、雄趕来。堅連放両箭、皆被華雄躲過。尽力気放第三箭、力大拽折了鵲画弓、棄弓縦馬穿林而走。祖茂曰、「主公頭上赤幘射目、雄望之、心不捨。可脱幘与茂戴之。」堅就馬上換了祖茂盔、分両路而走。華雄見赤幘者投東、引軍投東追趕。孫堅従小路得脱。祖茂被華雄追趕至急、将赤幘掛於人家焼不尽庭柱上、却於樹後潜躲。華雄軍遥見赤幘、四面囲定、不敢向前。用箭射之、方知是計。遂向前取了赤幘時、華雄縦馬尋祖茂。茂於林後、揮双刀欲劈雄。雄大喝一声、将祖茂一刀砍於馬下。雄引兵上関。程普、黄蓋、韓当都来尋見孫堅、再収拾軍馬屯紮。堅為折了鄉人祖茂、傷感不已。
却説大寨袁紹升帳、忽流星馬報孫堅大折了一陣、祖茂歿於軍中。紹大驚曰、「誰想孫文台折於華雄之手。他孤軍在外難紮寨、有恐有劫寨兵来。」令人取回大寨計議。云云。請衆諸侯商議、都皆到了、只公孫瓚後至、紹請入帳上列坐。紹曰、「前日、鮑将軍弟不遵調遣、擅自進兵、殺身喪命、折了許多軍士。今者、孫文台又敗於華雄、挫動銳気。」諸侯並皆不語。紹舉目遍視、見公孫瓚背後立著三人、容貌異常、都背後冷笑。紹問曰、「公孫太守背後何人也。」瓚呼玄徳出、曰、「此乃自幼同舎兄弟、平原令劉備是也。」曹操曰、「莫非破黄巾劉玄徳否。」瓚曰、「然。」令劉玄徳見。紹曰、「破黄巾有功来。」瓚将玄徳功細説一遍。紹曰、「既是漢室宗派、取座来。」命坐。備曰、「小県令安有坐礼。」紹曰、「吾非敬汝名爵、吾敬汝是帝室之胄、於国多曽有功。」玄徳拝謝、於階下末座、関、張叉手侍立於後。
正商議、探子来報、「華雄引鉄騎下関、以長竿挑著孫太守赤幘、直来寨前大罵搦戦。」紹曰、「誰敢去戦此賊。」袁術背後転出驍将俞渉、曰、「小将願往。」紹喜、便著俞渉出馬。即時報来、俞渉与華雄戦、不到三合、被華雄斬了。衆諸侯大驚、太守韓馥曰、「吾有上将潘鳳、可斬華雄。」紹急令喚至、応声而出、手提大斧上馬。去不多時、飛馬来報潘鳳又被華雄斬了。衆諸侯皆失色。袁紹拍股歎曰、「可惜吾上将顔良、文丑催軍未回。得一人在此、豈放華雄施威哉。汝衆諸侯許多将士、只無一人可追華雄。」衆官黙然。
堦下一人大呼出曰、「小将願往、斬華雄頭献於帳下。」衆視之、見其人身長九尺五寸、髯長一尺八寸、丹鳳眼、臥蚕眉、面如重棗、声似巨鍾、立於帳前。紹問何人、公孫瓚曰、「此劉玄徳之弟関某也。」紹問見居何職、瓚曰、「跟随玄徳充馬弓手。」帳上袁術大喝曰、「汝欺吾衆諸侯無大将耶。量一弓手、安敢乱言、与我乱棒打出。」曹操急止之、曰、「公路息怒、此人既出大言、必有広学。試教出馬、如其不勝、誅亦未遅。」袁紹曰、「不然。使一弓手出戦、必被華雄恥笑。吾等如何見人。」曹操曰、「拠此人儀表非俗、華雄安知他是弓手。」
関某曰、「如不勝、請斬我頭。」操教釃熱酒一杯、与関某飲了上馬。関某曰、「酒且斟下、某去便来。」出帳提刀、飛身上馬。衆諸侯聴得寨外鼓声大振、喊声大舉、如天摧地塌、岳撼山崩。衆皆失驚、正欲探聴、鸞鈴響処、馬到中軍、雲長提華雄之頭、擲於地上。其酒尚温。史官有詩曰、
威鎮乾坤第一功
轅門画鼓響鼕鼕
雲長停盞施英勇
酒尚温時斬華雄
雲長出馬、只一合斬了華雄、提頭入献、衆皆大喜。玄徳背後転出張飛、高声大叫、「俺哥哥斬了華雄、不就這裡殺入関去、活拿董卓、更待何時。」掉丈八蛇矛、来搶関隘。如何幹功。
金文京『中国小説選』
史進在リテ[㆑]路(みち)ニ、免(まぬがれ)[㆓]―不[㆑]―得飢エテハ飡(くら)イ渇キテ飲ミ、夜ハ住(とど)マリ暁(あかつき)ニハ行(ゆ)クヲ[㆒]。‘独自一箇’(ただひとり)、‘行了’(ゆく)こと半(はん)月(つき)‘之上’(いじょう)、‘来―[㆓]到’(きた)レリ渭州ニ[㆒]。‘這裏’(ここ)ニ‘也’(また)有リ[㆓]経略府[㆒]。莫(な)キカト[㆑]非(あら)ザル[㆔]師(し)父(ふ)ノ王教頭在ルニ[㆓]這裏ニ[㆒]。史進便チ入(い)リ[㆑]城(まち)ニ来タリテ看ル時、‘依然’(やはり)有リ[㆓]六(りく)街(がい)三市[㆒]。‘只見’(みれば)‘一箇’(ひとつ)ノ‘小小’(ちいさ)キ茶坊(みせ)、正ニ在リ[㆓]路口ニ[㆒]。史進便チ入(はい)リ[㆓]茶‘坊’(ぼう)‘裏’(り)ニ[㆒]来タリ、揀(えら)ビ[㆓]‘一副’(ひとつ)ノ坐(ざ)位(い)[㆒]ヲ‘坐了’(すわれ)リ。茶‘博士’(はかせ)問イテ道ウ、「‘客’(きゃく)‘官’(かん)吃(の)ムヤト[㆓]甚(なん)ノ茶ヲ[㆒]。」史進道ウ、「吃ムト[㆓]箇(いつぱい)ノ泡(ほう)茶ヲ[㆒]。」茶博士点(てん)ジ[㆓]箇(いつぱい)ノ泡茶ヲ[㆒]、放(お)ク[㆓]在(○)史進ノ面(めん)前(ぜん)ニ[㆒]。史進問イテ道ウ、「這裏ノ経略府ハ在リヤト[㆓]‘何處’(いずこ)ニ[㆒]。」茶博士道ウ、「只(それ)在ルガ[㆓]前(ぜん)面ニ[㆒]便チ是(これ)ナリト。」史進道、「借(しゃ)問(もん)ス、経略府内(ない)ニ有(い)ル[㆓]箇(ひとり)ノ東京(けい)ヨリ来タル的(の)教頭王進[㆒]麽(か)。」茶博士道、「這ノ府裏ニ教頭極メテ多シ。有リ[㆓]三四(よ)箇(にん)ノ姓(せい)王ナル的(もの)[㆒]。不ト[㆑]知[㆓]‘那箇’(いずれ)カ是レ王進ナルヤヲ[㆒]。」道ウコト猶オ未ダ«ザルニ»[㆑]了ラ、只見‘一箇’(ひとり)ノ大(だい)漢、大踏(とう)步(ほ)ニテ竟(ただ)チニ入(はい)リ来タリ、走(ある)キテ進(はい)ル[㆓]茶坊裏ニ[㆒]。史進看レ[㆑]他ヲ時(ば)、是レ箇ノ軍官ノ模様。‘怎生’(いかなる)‘結束’(いでたち)カ。但(た)ダ見ル、
頭ニハ裹(つつ)ミ[㆓]芝(し)麻(ま)羅萬字頂(ちょう)頭(とう)巾(きん)ヲ[㆒]、腦(のう)後(ご)ニ‘両箇’(ふたつ)ノ太原(げん)府紐(ちゅう)糸(し)金環アリ、上ニハ穿(き)テ[㆓]一(いち)領(りょう)ノ鸚(いん)哥(こ)緑(りょく)紵(ちょ)糸(し)戦(せん)袍(ぽう)ヲ[㆒]、腰(こし)ニハ繫(むす)ブ[㆓]一(いち)条(じょう)ノ文武双股(こ)鴉青ノ縧(とう)ヲ[㆒]。足ニハ穿(は)ク[㆓]一(いつ)双(そう)ノ鷹(よう)爪(そう)皮(ひ)四(し)縫(ほう)乾黄(おう)靴(か)ヲ[㆒]。生(うま)レ―[㆓]得タリ面(かお)ハ円ク耳大キク、鼻直(なお)ク口ハ方(ほう)ニ[㆒]。腮(さい)辺(へん)ニ一(いち)部(ぶ)ノ貉(かく)𧴜(そう)鬍(こ)鬚(しゅ)、身長八(はつ)尺(しゃく)、腰(こし)闊(ひろ)キコト十囲(い)。
那人入到茶坊裏面坐下。茶博士便道、「客官要尋王教頭、只問這個提轄便都認得。」史進慌忙起身施礼、便道、「官人請坐拝茶。」那人見了史進長大魁偉、像条好漢、便来与他施礼。両個坐下。史進道、「小人大胆、敢問官人高姓大名。」那人道、「洒家是経略府提轄、姓魯諱個達字。敢問阿哥、你姓甚麼。」史進道、「小人是華州華陰県人氏、姓史名進。請問官人、小人有個師父、是東京八十万禁軍教頭、姓王名進、不知在此経略府中有也無。」魯提轄道、「阿哥、你莫不是史家村甚麼九紋竜史大郎。」史進拝道、「小人便是。」魯提轄連忙還礼、説道、「聞名不如見面、見面勝似聞名。你要尋王教頭、莫不是在東京悪了高太尉的王進。」史進道、「正是那人。」魯達道、「俺也聞他名字。那個阿哥不在這裏。洒家聴得説他在延安府老种経略相公処勾当。俺這渭州、却是小种経略相公鎮守。那人不在這裏。你既是史大郎時、多聞你的好名字。俺且和你上街去吃杯酒。」魯提轄挽了史進的手、便出茶坊来。魯達回頭道、「茶銭洒家自還你。」茶博士応道、「提轄但吃不妨、只顧去。」
両個挽了肐膊、出得茶坊来。上街行得三五十歩、只見一簇衆人、囲住白地上。史進道、「兄長、我們看一看。」分開人衆看時、中間裏一個人仗著十来条桿棒、地上攤著十数個膏薬、一盤子盛著、挿把紙標児在上面、却原来是江湖上使槍棒売薬的。史進看了、却認的他、原来是教史進開手的師父、叫做打虎将李忠。史進就人叢中叫道、「師父、多時不見。」李忠道、「賢弟如何到這裏。」魯提轄道、「既是史大郎的師父、来和俺去吃三杯。」李忠道、「待小子売了膏薬、討了回銭、一同和提轄去。」魯達道、「誰奈煩等你。去便同去。」李忠道、「小人的衣飯、無計奈何。提轄先行、小人便尋将来。賢弟、你和提轄先行一歩。」魯達焦燥、把那看的人、一推一交、便罵道、「這廝們挟著屁眼撒開。不去的灑家便打。」衆人見是魯提轄、一哄都走了。李忠見魯達兇猛、敢怒而不敢言。只得陪笑道、「好急性的人。」当下収拾了行頭薬囊、寄頓了槍棒、三個人転彎抹角、来到州橋之下、一個潘家有名的酒店。門前挑出望竿、掛著酒旆、漾在空中飄蕩。怎見得好座酒肆。正是、李白点頭便飲、渕明招手回来。有詩為証。
風払煙籠錦旆揚
太平時節日初長
能添壮士英雄胆
善解佳人愁悶腸
三尺暁垂楊柳外
一竿斜挿杏花旁
男児未遂平生誌
且楽高歌入酔鄉
三人上到潘家酒楼上、揀個済楚閣児裏坐下。魯提轄坐了主位、李忠対席、史進下首坐了。酒保唱了喏。認得是魯提轄、便道、「提轄官人、打多少酒。」魯達道、「先打四角酒来。」一面鋪下菜蔬果品案酒、又問道、「官人吃甚下飯。」魯達道、「問甚麼。但有、只顧売来、一発算銭還你。這廝只顧来聒噪。」酒保下去、随即盪酒上来。但是下口肉食、只顧将来、擺一卓子。三個酒至数杯、正説些閑話、較量些槍法、説得入港、只聴得間壁閣子裏、有人哽哽咽咽啼哭。魯達焦燥、便把碟児盞児都丟在楼板上。酒保聴得、慌忙上来看時、見魯提轄気憤憤地。酒保抄手道、「官人要甚東西、分付売来。」魯達道、「洒家要甚麼。你也須認的洒家、却恁地教甚麼人在間壁吱吱的哭、攪俺弟兄們吃酒。洒家須不曽少了你酒銭。」酒保道、「官人息怒。小人怎敢教人啼哭打攪官人吃酒。這個哭的、是綽酒座児唱的父子両人。不知官人們在此吃酒、一時間自苦了啼哭。」魯提轄道、「可是作怪。你与我喚的他来。」酒保去叫、不多時、只見両個到来前面。一個十八九歳的婦人、背後一個五六十歳的老児、手裏拿串拍板、都来到面前。看那婦人、雖無十分的容貌、也有些動人的顔色。但見、
蓬鬆雲髻、挿一枝青玉簪児。裊娜繊腰、系六幅紅羅裙子。素白旧衫籠雪体、淡黄軟襪襯弓鞋。娥眉緊蹙、汪汪涙眼落珍珠。粉面低垂、細細香肌消玉雪。若非雨病雲愁、定是懐憂積恨。大体還他肌骨好、不搽脂粉也風流。
那婦人拭著涙眼、向前来深深的道了三個万福。那老児也都相見了、魯達問道、「你両個是那裏人家。為甚啼哭。」那婦人便道、「官人不知、容奴告稟。奴家是東京人氏、因同父母来這渭州投奔親眷、不想搬移南京去了。母親在客店裏染病身故。子父二人、流落在此生受。此間有個財主、叫做鎮関西鄭大官人、因見奴家、便使強媒硬保、要奴作妾。誰想写了三千貫文書、虚銭実契、要了奴家身体。未及三個月、他家大娘子好生利害、将奴趕打出来、不容完聚。著落店主人家、追要原典身銭三千貫。父親懦弱、和他争執不的。他又有銭有勢。当初不曽得他一文、如今那討銭来還他。没計奈何、父親自小教得奴家些小曲児、来這裏酒楼上趕座子。毎日但得些銭来、将大半還他、留些少子父們盤纏。這両日酒客稀少、違了他銭限、怕他来討時受他羞恥。子父們想起這苦楚来、無処告訴、因此啼哭。不想誤触犯了官人、望乞恕罪、高擡貴手。」魯提轄又問道、「你姓什麼。在那個客店裏歇。那個鎮関西鄭大官人在那裏住。」老児答道、「老漢姓金、排行第二。孩児小字翠蓮。鄭大官人便是此間状元橋下売肉的鄭屠、綽号鎮関西。老漢父子両個、只在前面東門裏魯家客店安下。」魯達聴了、道、「呸。俺只道那個鄭大官人、却原来是殺豬的鄭屠。這個腌臢潑才、投托著俺小种経略相公門下、做個肉鋪戶、却原来這等欺負人。」回頭看著李忠、史進道、「你両個且在這裏、等洒家去打死了那廝便来。」史進、李忠抱住勧道、「哥哥息怒。明日却理会。」両個三回五次勧得他住。
魯達又道、「老児、你来、洒家与你些盤纏。明日便回東京去、如何。」父子両個告道、「若是能勾得回鄉去時、便是重生父母、再長爺娘。只是店主人家如何肯放。鄭大官人須著落他要銭。」魯提轄道、「這個不妨事。俺自有道理。」便去身辺摸出五両来銀子、放在桌上、看著史進道、「洒家今日不曽多帯得些出来。你有銀子、借些与俺。洒家明日便送還你。」史進道、「直甚麼、要哥哥還。」去包裹裏取出一錠十両銀子、放在桌上。魯達看著李忠道、「你也借些出来与灑家。」李忠去身辺摸出二両来銀子。魯提轄看了、見少、便道、「也是個不爽利的人。」魯達只把這十五両銀子与了金老、分付道、「你父子両個将去做盤纏。一面収拾行李。俺明日清早来発付你両個起身。看那個店主人敢留你。」金老並女児拝謝去了。魯達把這二両銀子去還了李忠。三人再吃了両角酒、下楼来、叫道、「主人家、酒銭洒家明日送来還你。」主人家連声応道、「提轄只顧自去、但吃不妨。只怕提轄不来賒。」三個人出了潘家酒肆、到街上分手。史進、李忠各自投客店去了。只説魯提轄回到経略府前下処、到房裏、晩飯也不吃、気憤憤的睡了。主人家又不敢問他。
再説金老得了這一十五両銀子、回到店中、安頓了女児。先去城外遠処覓下一輛車児、回来収拾了行李、還了房宿銭、算清了柴米銭、只等来日天暁。当夜無事。
次早五更起来、子父両個先打火做飯吃罷、収拾了。天色微明、只見魯提轄大踏歩走入店裏来、高声叫道、「店小二、那裏是金老歇処。」小二哥道、「金公、提轄在此尋你。」金老開了房門、便道、「提轄官人裏面請坐。」魯達道、「坐甚麼。你去便去、等甚麼。」金老引了女児、挑了担児、作謝提轄、便待出門。店小二攔住道、「金公那裏去。」魯達問道、「他少你房銭。」小二道、「小人房銭、昨夜都算還了。須欠鄭大官人典身銭、著落在小人身上看管他哩。」魯提轄道、「鄭屠的銭、洒家自還他。你放這老児還鄉去。」那店小二那裏肯放。魯達大怒、叉開五指、去那小二臉上只一掌、打的那店小二口中吐血。再復一拳、打下当門両個牙歯。小二扒将起来、一道煙走了。店主人那裏敢出来攔他。金老父子両個、忙忙離了店中、出城自去尋昨日覓下的車児去了。
且説魯達尋思、恐怕店小二趕去攔截他、且向店裏掇条凳子、坐了両個時辰。約莫金公去的遠了、方才起身、逕投状元橋来。
且説鄭屠開著両間門面、両副肉案、懸掛著三五片豬肉。鄭屠正在門前櫃身內坐定、看那十来個刀手売肉。魯達走到門前、叫声鄭屠。鄭屠看時、見是魯提轄、慌忙出櫃身来、唱喏道、「提轄恕罪。」便叫副手、「掇条凳子来、提轄請坐。」魯達坐下道、「奉著経略相公鈞旨、要十斤精肉、切做臊子。不要見半点肥的在上頭。」鄭屠道、「使頭、你們快選好的切十斤去。」魯提轄道、「不要那等腌臢廝們動手、你自与我切。」鄭屠道、「説得是、小人自切便了。」自去肉案上揀了十斤精肉、細細切做臊子。那店小二把手帕包了頭、正来鄭屠家報説金老之事、却見魯提轄坐在肉案門辺、不敢攏来、只得遠遠的立住在房檐下望。這鄭屠整整的自切了半個時辰、用荷葉包了、道、「提轄、教人送去。」魯達道、「送甚麼。且住、再要十斤、都是肥的、不要見些精的在上面、也要切做臊子。」鄭屠道、「却才精的、怕府裏要裹餛飩。肥的臊子何用。」
魯達睜著眼道、「相公鈞旨分付洒家、誰敢問他。」鄭屠道、「是合用的東西、小人切便了。」又選了十斤実膘的肥肉、也細細的切做臊子、把荷葉来包了。整弄了一早辰、却得飯罷時候。那店小二那裏敢過来。連那正要買肉的主顧、也不敢攏来。鄭屠道、「著人与提轄拿了、送将府裏去。」魯達道、「再要十斤寸金軟骨、也要細細地剁做臊子、不要見些肉在上面。」鄭屠笑道、「却不是特地来消遣我。」魯達聴罷、跳起身来、拿著那両包臊子在手裏、睜眼看著鄭屠説道、「洒家特的要消遣你。」把両包臊子、劈面打将去、却似下了一陣的肉雨。鄭屠大怒、両条忿気従腳底下直沖到頂門、心頭那一把無明業火、焰騰騰的按納不住、従肉案上搶了一把剔骨尖刀、托地跳将下来。魯提轄早抜歩在当街上。衆隣舎並十来個火家、那個敢向前来勧。両辺過路的人、都立住了腳、和那店小二也驚的呆了。
鄭(てい)屠(と)ハ右手ニ拿(も)チ[㆑]刀(かたな)ヲ、左手ハ便チ来タリテ要ルモ[㆑]揪(つか)マント[㆓]魯(ろ)達(だつ)ヲ[㆒]、被(よ)リ[㆓]這(こ)ノ魯提轄(かつ)ニ[㆒]就キテ[㆑]勢イニ按(おさ)エ―[㆓]住(とど)メ左手ヲ[㆒]、‘趕將’(おい)入(はい)リ去(ゆ)キテ、望(むか)[㆓]イテ‘小腹’(したはら)ノ上ニ[㆒]只一(ひと)腳(あし)、‘騰地’(とんと)踢(け)リ[㆓]―倒サ―了(る)在(○)当(とう)街(かい)ノ上ニ[㆒]。魯達ハ再(さら)ニ入(はい)リ[㆓]一(いつ)步(ぽ)[㆒]、踏(ふ)ミ[㆓]―住(おさ)エ‘胸脯’(むね)ヲ[㆒]、提(も)チ[㆓]―起(あ)ゲ那(か)ノ醋(す)ノ‘鉢児’(はち)ノ‘大小’(おおきさ)ノ‘拳頭’(げんこつ)ヲ[㆒]、看―[㆓]着(て)這ノ鄭屠ヲ[㆒]道(い)ウ、「‘洒家’(わし)ハ始(はじ)メテ投(とう)ジテヨリ[㆓]老种(ちゅう)経(けい)略相(しょう)公(こう)ニ[㆒]、做(な)リ―[㆓]到(いた)レバ関西(ぜい)五路ノ廉訪使ニ[㆒]、也(また)不[㆑]枉(あだ)ナラザル―[㆔]了(な)リ叫(よ)ビ―[㆓]做(な)スモ鎮(ちん)関西ト[㆒]。你(おまえ)ハ是レ箇(ひとり)ノ売ル[㆑]肉ヲ的(の)操ル[㆑]刀ヲ屠(と)戸(こ)、狗(いぬ)一(いつ)般(ばん)的(の)人(もの)、也叫ビ―[㆓]做スカ鎮関西ト[㆒]。你‘如何’(いか)デ強(しい)テ‘騙[㆓]―了’(かどわかせ)ルヤト金翠蓮ヲ[㆒]。」
‘撲的’(ぼこつと)只一拳、正ニ打チ[㆓]在‘鼻子’(はな)ノ上ヲ[㆒]、打得(て)鮮血迸リ流ル。‘鼻子’(はな)ハ歪(ゆが)ミテ在リ[㆓]半(はん)辺(べん)ニ[㆒]、却(あたか)モ便チ似タリ[㆑]開キ了ルニ―[㆓]個(いつけん)ノ油醬鋪ヲ[㆒]、醎(しょつぱい)的(もの)、酸(すつぱい)的、辣的、‘一発’(いつぺん)ニ都(みな)滾(なが)レ出デ来タリ。鄭屠ハ掙(こら)エ不[㆑]起(き)レ来(ニ)、那把(の)尖(せん)刀(とう)ヲ也(も)丢(す)テ[㆓]在一(いつ)辺(ぺん)ニ[㆒]、‘口裏’(くち)ニ只(ひたすら)叫(さけ)ブ[㆓]「打チ得(て)好(よ)シト[㆒]。」魯達ハ罵(ののし)リ道ウ、「‘直娘賊’(こんちくしょう)、還(まだ)敢エテ応(ごた)エスト[㆑]口(くち)。」提チ―[㆓]起ゲ拳頭ヲ[㆒]来タリテ、就キテ[㆓]眼(め)ノ眶(ふち)ノ際(きわ)ノ‘眉稍’(まゆね)ニ[㆒]只一拳、打チ得眼ハ睖(ぼ)ケ縫(ふち)ハ裂(さ)ケ、‘烏珠’(めんたま)迸(はじ)ケ出デテ、也(また)似(ごと)ク[㆘]開―[㆓]了箇(いつけん)ノ彩帛(はく)舖ヲ[㆒]的(もの)ノ[㆖]、紅(あかい)的、黒(くろい)的、絳(まつかな)的、都‘滾將’(ながれ)出デ来タレリ。
両辺看的人、懼怕魯提轄、誰敢向前来勧。鄭屠当不過、討饒。魯達喝道、「咄。你是個破落戶。若是和俺硬到底、洒家倒饒了你。你如何叫俺討饒、洒家却不饒你。」只一拳、太陽上正著、却似做了一個全堂水陸的道場、磬児鈸児鐃児一斉響。魯達看時、只見鄭屠挺在地下、口裏只有出的気、没了入的気、動撣不得。魯提轄仮意道、「你這廝詐死、洒家再打。」只見麺皮漸漸的変了。魯達尋思道、「俺只指望痛打這廝一頓、不想三拳真個打死了他。洒家須吃官司、又没人送飯。不如及早撒開。」抜歩便走。回頭指著鄭屠屍道、「你詐死。洒家和你慢慢理会。」一頭罵、一頭大踏歩去了。街坊隣舎並鄭屠的火家、誰敢向前来攔他。
魯提轄回到下処、急急巻了些衣服盤纏、細軟銀両、但是旧衣粗重、都棄了。提了一条斉眉短棒、奔出南門、一道煙走了。
金文京『中国小説選』
師徒們行了五七日荒路、忽一日天色将晩、遠遠的望見一村人家。三蔵道、「悟空、你看那壁廂有座山荘相近、我們去告宿一宵、明日再行何如。」行者道、「且等老孫去看看吉凶、再作区処。」那師父挽住糸韁、這行者定睛観看。
行者看罷道、「師父請行、定是一村好人家、正可借宿。」那長老催動白馬、早到街衢之口。又見一個少年、頭裹綿布、身穿藍襖、持傘背包、斂褌劄褲、腳踏著一双三耳草鞋、雄糾糾的、出街忙走。行者順手一把扯住道、「那裡去。我問你一個信児、此間是甚麼地方。」那個人只管苦掙、口裡嚷道、「我荘上没人、只是我好問信。」行者陪著笑道、「施主莫悩。『与人方便、自己方便。』你就与我説説地名何害。我也可解得你的煩悩。」那人掙不脱手、気得乱跳道、「蹭蹬、蹭蹬。家長的屈気受不了、又撞著這個光頭、受他的清気。」
行者道、「你有本事、劈開我的手、你便就去了也罷。」那人左扭右扭、那裡扭得動、却似一把鉄鈐拑住一般。気得他丟了包袱、撇了傘、両隻手雨点似来抓行者。行者把一隻手扶著行李、一隻手抵住那人、憑他怎麼支吾、只是不能抓著。行者愈加不放、急得爆燥如雷。三蔵道、「悟空、那裡不有人来了。你再問那人就是、只管扯住他怎的。放他去罷。」行者笑道、「師父不知、若是問了別人没趣、須是問他、才有買売。」那人被行者扯住不放、只得説出道、「此処乃是烏斯蔵国界之地、喚做高老荘。一荘人家有大半姓高、故此喚做高老荘。你放了我去罷。」行者又道、「你這様行装、不是個走近路的。你実与我説、你要往那裡去、端的所幹何事、我纔放你。」
那老者戴一頂烏綾巾、穿一領蔥白蜀錦衣、踏一双糙米皮的犢子靴、繫一条黒緑絛子、出来笑語相迎、便叫、「二位長老、作揖了。」三蔵還了礼、行者站著不動。那老者見他相貌兇醜、便就不敢与他作揖。行者道、「怎麼不唱老孫喏。」那老児有幾分害怕、叫高才道、「你這小廝却不弄殺我也。家裡現有一個醜頭怪脳的女婿打発不開、怎麼又引這個雷公来害我。」行者道、「老高、你空長了許大年紀、還不省事。若専以相貌取人、乾浄錯了。我老孫醜自醜、却有些本事。替你家擒得妖精、捉得鬼魅、拿住你那女婿、還了你女児、便是好事、何必諄諄以相貌為言。」太公見説、戦兢兢的、只得強打精神、叫声、「請進。」這行者見請、才牽了白馬、教高才挑著行李、与三蔵進去。他也不管好歹、就把馬拴在敞庁柱上、扯過一張退光漆交椅、叫師父坐下。他又扯過一張椅子、坐在傍辺。那高老道、「這個小長老、倒也家懐。」行者道、「你若肯留我住得半年、還家懐哩。」
坐定、高老問道、「適間小价説、二位長老是東土来的。」三蔵道、「便是。貧僧奉朝命往西天拝仏求経、因過宝荘、特借一宿、明日早行。」高老道、「二位原是借宿的、怎麼説会拿怪。」行者道、「因是借宿、順便拿幾個妖怪児耍耍的。動問府上有多少妖怪。」高老道、「天哪。還吃得有多少哩、只這一個妖怪女婿、已被他磨慌了。」行者道、「你把那妖怪的始末、有多大手段、従頭児説説我聴、我好替你拿他。」高老道、「我們這荘上、自古至今、也不暁得有甚麼鬼祟魍魎、邪魔作耗。只是老拙不幸、不曽有子、止生三個女児、大的喚名香蘭、第二的名玉蘭、第三的名翠蘭。那両個従小児配与本荘人家。止有小的個要招個女婿、指望他与我同家過活、做個養老女婿、撐門抵戶、做活当差。不期三年前、有一個漢子、模様児倒也精緻。他説是福陵山上人家、姓豬、上無父母、下無兄弟、願与人家做個女婿。我老拙見是這般一個無根無絆的人、就招了他。一進門時、倒也勤謹、耕田耙地、不用牛具。収割田禾、不用刀杖。昏去明来、其実也好。只是一件、有些会変嘴臉。」
行者道、「‘怎麽’(いか)樣(よう)変ワルヤト。」高老道、「初テ来タル時ハ是レ‘一条’(ひとり)ノ黒(くろ)‘胖漢’(でぶ)、‘後来’(のち)ニ‘就’(すなわ)チ変ワリテ做(な)ル[㆓]一個ノ長イ嘴(くち)大キナ耳(みみ)朶(たぶ)的‘獃子’(うすのろ)ニ[㆒]。脳(あたま)ノ後ロニ又(また)有リ[㆓]‘一溜’(ひとすじ)ノ‘鬃毛’(たてがみ)[㆒]、‘身体’(からだ)ハ‘粗糙’(ぶこつ)ニテ怕(おそ)レシメ[㆑]人ヲ、‘頭臉’(かおつき)就チ象(に)ル[㆓]個(いつぴき)ノ猪(ぶた)的模様ニ[㆒]。食腸却ッテ又甚ダ大キク、‘一頓’(いつかい)要ス[㆑]喫(くら)ウ[㆓]三五斗(と)ノ米(べい)飯(はん)ヲ[㆒]。‘早間’(あさ)ノ点心モ、也(また)得テ[㆓]百十(じつ)個(こ)ノ焼餅ヲ[㆒]纔ニ勾(た)ル。
喜得還吃斎素。若再吃葷酒、便是老拙這些家業田産之類、不上半年、就吃個罄浄。」三蔵道、「只因他做得、所以吃得。」高老道、「吃還是件小事。他如今又会弄風、雲来霧去、走石飛砂、諕得我一家並左隣右舎、俱不得安生。又把那翠蘭小女関在後宅子裡、一発半年也不曽見面、更不知死活如何。因此知他是個妖怪、要請個法師与他去退去退。」行者道、「這個何難。老児你管放心、今夜管情与你拿住、教他写了退親文書、還你女児如何。」高老大喜道、「我為招了他不打緊、壊了我多少清名、疏了我多少親眷。但得拿住他、要甚麼文書。就煩与我除了根罷。」行者道、「容易、容易。入夜之時、就見好歹。」
老児十分歓喜、才教展抹桌椅、擺列斎供。斎罷将晩、老児問道、「要甚兵器。要多少人随。趁早好備。」行者道、「兵器我自有。」老児道、「二位只是那根錫杖、錫杖怎麼打得那個妖精。」行者随於耳內取出一個繡花針来、捻在手中、迎風幌了一幌、就是碗来粗細的一根金箍鉄棒、対著高老道、「你看這条棍子、比你家兵器如何。可打得這怪否。」高老又道、「既有兵器、可要人跟。」行者道、「我不用人、只是要幾個年高有徳的老児、陪我師父清坐閑敘、我好撇他而去。等我把那妖精拿来、対衆取供、替你除了根罷。」那老児即喚家僮、請了幾個親故朋友。一時都到、相見已畢、行者道、「師父、你放心穏坐、老孫去也。」
你看他揝著鉄棒、扯著高老道、「你引我去後宅子裡妖精的住処看看。」高老遂引他到後宅門首。行者道、「你去取鑰匙来。」高老道、「你且看看、若是用得鑰匙、却不請你了。」行者笑道、「你那老児年紀雖大、却不識耍。我把這話児哄你一哄、你就当真。」走上前、摸了一摸、原来是銅汁灌的鎖子。狠得他将金箍棒一搗、搗開門扇、裡面却黒洞洞的。行者道、「老高、你去叫你女児一声、看他可在裡面。」那老児硬著胆叫道、「三姐姐。」那女児認得是他父親的声音、才少気無力的応了一声道、「爹爹、我在這裡哩。」行者閃金睛、向黒影裡仔細看時、你道他怎生模様。但見那、
雲鬢乱堆無掠
玉容未洗塵淄
一片蘭心依旧
十分嬌態傾頹
桜唇全無気血
腰肢屈屈偎偎
愁蹙蹙蛾眉淡
痩怯怯語声低
他走来看見高老、一把扯住、抱頭大哭。行者道、「且莫哭、且莫哭。我問你、妖怪往那裡去了。」女子道、「不知往那裡去。這些時、天明就去、入夜方来。雲雲霧霧、往回不知何所。因是暁得父親要祛退他、他也常常防備、故此昏来朝去。」行者道、「不消説了。老児、你帯令愛往前辺宅裡、慢慢的敘闊、譲老孫在此等他。他若不来、你却莫怪。他若来了、定与你剪草除根。」那老高歓歓喜喜的把女児帯将前去。
行者却弄神通、揺身一変、変得就如那女子一般、独自個坐在房裡等那妖精。不多時、一陣風来、真個是走石飛砂。那陣狂風過処、只見半空裡来了一個妖精、果然生得醜陋、黒臉短毛、長喙大耳。穿一領青不青、藍不藍的梭布直裰、繫一条花布手巾。行者暗笑道、「原来是這個買売。」好行者、却不迎他、也不問他、且睡在床上推病、口裡哼哼嘖嘖的不絶。那怪不識真仮、走進房、一把摟住、就要親嘴。行者暗笑道、「真個要来弄老孫哩。」即使個拿法、托著那怪的長嘴、叫做個小跌。漫頭一抖、撲的摜下床来。那怪爬起来、扶著床辺道、「姐姐、你怎麼今日有些怪我。想是我来得遅了。」行者道、「不怪、不怪。」那妖道、「既不怪我、怎麼就丟我這一跌。」行者道、「你怎麼就這等様小家子、就摟我親嘴。我因今日有些不自在。若毎常好時、便起来開門等你了。你可脱了衣服睡是。」那怪不解其意、真個就去脱衣。行者跳起来、坐在浄桶上。那怪依旧復来床上摸一把、摸不著人、叫道、「姐姐、你往那裡去了。請脱衣服睡罷。」行者道、「你先睡、等我出個恭来。」那怪果先解衣上床。
行者忽然嘆口気、道声、「造化低了。」那怪道、「你悩怎的。造化怎麼得低的。我得到了你家、雖是吃了些茶飯、却也不曽白吃你的、我也曽替你家掃地通溝、搬磚運瓦、築土打牆、耕田耙地、種麦挿秧、創家立業。如今你身上穿的錦、戴的金、四時有花果享用、八節有蔬菜烹煎、你還有那些児不趁心処、這般短嘆長吁、説甚麼造化低了。」行者道、「不是這等説。今日我的父母隔著牆、丟磚料瓦的、甚是打我罵我哩。」那怪道、「他打罵你怎的。」行者道、「他説我和你做了夫妻、你是他門下一個女婿、全没些児礼体。這様個醜嘴臉的人、又会不得姨夫、又見不得親戚、又不知你雲来霧去、端的是那裡人家、姓甚名誰、敗壊他清徳、玷辱他門風、故此這般打罵、所以煩悩。」那怪道、「我雖是有些児醜陋、若要俊、却也不難。我一来時、曽与他講過、他願意方才招我。今日怎麼又説起這話。我家住在福陵山雲桟洞。我以相貌為姓、故姓豬、官名叫做豬剛鬣。他若再来問你、你就以此話与他説便了。」行者暗喜道、「那怪却也老実、不用動刑、就供得這等明白。既有了地方、姓名、不管怎的也拿住他。」
行者道、「他要(す)ル[㆘]請(まね)イテ[㆓]法師ヲ来タリ拿(とら)エント[上レ]你(おまえ)ヲ哩(なり)ト。」那(そ)ノ怪笑イテ道ウ、「‘睡著’(ねむれ)、睡著、莫レ[㆑]採(かま)ウ[㆑]他ニ。我ニ有ラバ[㆓]天罡数的変化ト、九歯的‘釘鈀’(くまで)[㆒]、怕(おそ)レン[㆒]‘甚麽’(なん)ノ法師和尚道士ヲ[㆒]。‘就是’(たとえ)你ノ‘老子’(おやじ)有リテ[㆓]虔心[㆒]、請(こ)ウモ[㆑]下ダルヲ[㆓]九天ノ蕩魔祖師ノ下界ニ[㆒]、我也(また)曽テ与[㆑]他ト做リ―[㆓]過(た)レバ相識ニ[㆒]、他モ也(また)不[㆔]敢エテ‘怎―[㆓]的’(いかん)トスルナシト我ヲ[㆒]。」行者道、「他説(い)ウ、請(まね)キ[㆘]一個ノ五百年前ニ大(おお)イニ鬧(さわ)ガセシ[㆓]天宮ヲ[㆒]、姓ハ孫的斉天大聖ヲ[㆖]、要ル[㆓]来タリテ拿(つか)マエント[一レ]你ヲ哩(なり)。」那ノ怪聞[㆓]キ―得(て)‘這個’(この)‘名頭’(なまえ)ヲ[㆒]、就有[㆓]三分害怕[㆒]道、「既是這等説、我去了罷。両口子做不[㆑]成了。」行者道、「你怎的就去。」那怪道、「你不[㆓]知道[㆒]、那鬧[㆓]天宮[㆒]的弼馬温、有[㆓]些本事[㆒]、只恐我弄[㆑]他不[㆑]過、低―[㆓]了名頭[㆒]、不[㆑]象[㆓]模様[㆒]。」他套―[㆓]上衣服[㆒]、開―[㆓]了門[㆒]、往[㆑]外就走、被[㆓]行者[㆒]一把扯住、将[㆓]自己臉上[㆒]抹了一抹、現―[㆓]出原身[㆒]喝道、「好妖怪、那裏走。你抬[㆑]頭看看、我是那個。」那怪転―[㆓]過眼[㆒]来、看―[㆓]見行者咨牙倈嘴、火眼金睛、磕頭毛臉、就是個活雷公相似[㆒]、慌得他手麻腳軟、劃剌的一声、掙破―[㆓]了衣服[㆒]、化[㆓]狂風[㆒]脱[㆑]身而去。行者急上前、掣[㆓]鉄棒[㆒]、望[㆑]風打―[㆓]了一下[㆒]。那怪化[㆓]万道火光[㆒]、径転[㆓]本山[㆒]而去。行者駕[㆑]雲随[㆑]後趕来、叫[㆓]声「那裡走[㆒]。你若上[㆑]天、我就趕到[㆓]斗牛宮[㆒]。你若入[㆑]地、我就追至[㆓]枉死獄[㆒]。」咦。畢竟不[㆑]知這一去、趕至[㆓]何方[㆒]、有[㆓]何勝敗[㆒]、且聴[㆓]下回分解[㆒]。
金文京『中国小説選』
山外ノ青山(ざん)楼外ノ楼
西(せい)湖(こ)ノ歌舞‘幾時’(いつ)カ休(や)マン
暖(だん)風(ぷう)薰(くん)ジ得(え)テ遊人ハ醉(よ)イ
直チニ把(もつ)テ[㆓]杭州ヲ[㆒]作(な)ス[㆒]汴州ト[㆓]
‘話説’(さて)、西湖ノ景致、山水鮮(せん)明ナリ。晋(しん)朝ノ咸(かん)和年間、山水大イニ発(はつ)シ、洶(きょう)湧(ゆう)トシテ流―[㆓]入スルニ西門ニ[㆒]、忽(こつ)然(ぜん)トシテ水ノ内ニ有リ[㆓]牛一(いつ)頭(とう)[㆒]、見レバ渾(こん)身(しん)金(こん)色(じき)ナリ。後ニ水退(しりぞ)キテ、其ノ牛随(したが)イテ行(ゆ)キ至リ[㆓]北山ニ[㆒]、不[㆑]知[㆓]‘去向’(ゆくえ)ヲ[㆒]。鬨(さわが)セ―[㆓]動カシ杭州市(し)上(じょう)之人ヲ[㆒]、皆以テ為シ[㆓]顕(げん)化(げ)ト[㆒]、‘所以’(ゆえ)ニ建(こん)―[㆓]立(りゅう)シ一(いち)寺(じ)ヲ[㆒]、名(な)ヅケテ曰ク[㆓]金牛(ぎゆう)寺(じ)ト[㆒]。西門即チ今(いま)之湧金門ナリ。立テ[㆓]一座ノ廟(びょう)ヲ[㆒]、号(ごう)ス[㆓]金華将軍ト[㆒]。当時有リ[㆓]一(ひとり)ノ番僧(そう)[㆒]、法名(みょう)ハ渾寿羅。到リテ[㆓]此ノ武林郡ニ[㆒]雲(うん)遊シ、翫(め)デテ[㆓]其ノ山景ヲ[㆒]道(い)エラク、「霊(りょう)鷲(じゅ)山(せん)前(ぜん)ノ小峰一座、忽然トシテ不[㆑]見エ、‘原来’(なんと)飛ビテ到タルカト[㆓]此処ニ[㆒]。」当時人皆不[㆑]信セ。僧言エラク、「我記(き)シ得タルニ霊鷲山前ノ峰嶺(れい)ハ、喚ビテ做ス[㆓]霊鷲嶺ト[㆒]。這ノ山ノ洞(どう)裹(り)ニ有リ[㆓]個(いつぴき)ノ白(びゃく)猿(えん)[㆒]、看ヨト[㆓]我呼ビテ出(い)ダシテ為スヲ[㆒][㆑]験(しるし)ト。」‘果然’(はたせる)カナ呼ビ―[㆓]出ダシ白猿ヲ[㆒]来タレリ。山(さん)前ニ有リ[㆓]一(いち)亭(てい)[㆒]、今ハ喚ビテ做ス[㆓]冷泉(ぜん)亭ト[㆒]。
又有一座孤山、生在西湖中。先曽有林和靖先生在此山隠居、使人搬挑泥石、砌成一条走路、東接断橋、西接棲霞嶺、因此喚作孤山路。
又唐時有刺史白楽天、築一条路、南至翠屏山、北至棲霞嶺、喚做白公堤、不時被山水衝倒、不只一番、用官銭修理。後宋時蘇東坡来做太守、因見有這両条路被水沖壊、就買木石、起人夫築得堅固。六橋上朱紅欄杆、堤上栽種桃柳、到春景融和、端的十分好景、堪描入画、後人因此只喚做蘇公堤。又孤山路畔、起造両条石橋、分開水勢、東辺喚做断橋、西辺喚做西寧橋。真乃、
隠隠山蔵三百寺
依稀雲鎖二高峰
説話的、只説西湖美景、仙人古跡。俺今日且説一個俊俏後生、只因遊玩西湖、遇着両個婦人、直惹得幾処州城、鬧動了花街柳巷。有分教才人把筆、編成一本風流話本。単説那子弟、姓甚名誰。遇着甚般様的婦人。惹出甚般様事。有詩為証、
清明時節雨紛紛
路上行人欲断魂
借問酒家何処有
牧童遥指杏花村
話説宋高宗南渡、紹興年間、杭州臨安府過軍橋黒珠巷內、有一個宦家、姓李、名仁。見做南廊閣子庫募事官、又与邵太尉管銭糧。家中妻子有一個兄弟許宣、排行小乙。他爹曽開生薬店、自幼父母双亡、却在表叔李将仕家生薬鋪做主管、年方二十二歳。那生薬店開在官巷口。
忽一日、許宣在鋪內做買売、只見一個和尚来到門首、打個問訊、道、「貧僧是保叔塔寺內僧、前日已送饅頭並巻子在宅上。今清明節近、追修祖宗、望小乙官到寺焼香、勿誤。」許宣道、「小子准来。」和尚相別去了。許宣至晩帰姐夫家去。
原来許宣無有老小、只在姐姐家住。当晩与姐姐説、「今日保叔塔和尚来請焼絪子、明日要薦祖宗、走一遭了来。」次日早起、買了紙馬、蠟燭、経幡、銭垜一応等項、吃了飯、換了新鞋襪衣服、把𥯃子、銭馬使条袱子包了、径到官巷口李将仕家来。李将仕見、問許宣何処去、許宣道、「我今日要去保叔塔焼絪子、追薦祖宗、乞叔叔容暇一日。」李将仕道、「你去便回。」
許宣離了鋪中、入寿安坊、花市街、過井亭橋、往清河街後銭塘門、行石函橋、過放生碑、径到保叔塔寺。尋見送饅頭的和尚、懺悔過疏頭、焼了𥯃子、到仏殿上看衆僧念経。吃斎罷、別了和尚、離寺迤邐間走、過西寧橋、孤山路、四聖観、来看林和靖墳、到六一泉間走。不期雲生西北、霧鎖東南、落下微微細雨、漸大起来。正是清明時節、少不得天公応時、催花雨下、那陣雨下得綿綿不絶。許宣見腳下湿、脱下了新鞋襪、走出四聖観来尋船、不見一隻。正没擺布処、只見一個老児揺着一隻船過来。許宣暗喜、認時、正是張阿公。叫道、「張阿公、搭我則個。」老児聴得叫、認時、原来是許小乙。将船揺近岸来、道、「小乙官、着了雨、不知要何処上岸。」許宣道、「涌金門上岸。」這老児扶許宣下船、離了岸、揺近豊楽楼来。
揺不上十数丈水面、只見岸上有人叫道、「公公、搭船則個。」許宣看時、是一個婦人、頭戴孝頭髻、烏雲畔挿着些素釵梳、穿一領白絹衫児、下穿一条細麻布裙。這婦人肩下一個丫鬟、身上穿着青衣服、頭上一双角髻、戴両条大紅頭須、挿着両件着飾、手中捧着一個包児、要搭船。那老張対小乙官道、「因風吹火、用力不多、一発搭了他去。」許宣道、「你便叫他下来。」老児見説、将船傍了岸辺、那婦人同丫鬟下船、見了許宣、起一点朱唇、露両行砕玉、向前道一個万福。許宣慌忙起身答礼。那娘子和丫鬟艙中坐定了、娘子把秋波頻転、瞧着許宣。許宣平生是個老実之人、見了此等如花似玉的美婦人、傍辺又是個俊俏美女様的丫鬟、也不免動念。
那婦人道、「不敢動問官人、高姓尊諱。」許宣答道、「在下姓許、名宣、排行第一。」婦人道、「宅上何処。」許宣道、「寒舎住在過軍橋黒珠児巷、生薬鋪內做買売。」那娘子問了一回、許宣尋思道、「我也問他一問。」起身道、「不敢拝問娘子高姓。潭府何処。」那婦人答道、「奴家是白三班白殿直之妹、嫁了張官人、不幸亡過了、見葬在這雷嶺。為因清明節近、今日帯了丫鬟、往墳上祭掃了方回。不想值雨、若不是搭得官人便船、実是狼狽。」又間講了一回、迤邐船揺近岸。只見那婦人道、「奴家一時心忙、不曽帯得盤纏在身辺、万望官人処借些船銭還了、並不有負。」許宣道、「娘子自便、不妨、些須船銭、不必計較。」還罷船銭、那雨越不住、許宣挽了上岸。那婦人道、「奴家只在箭橋双茶坊巷口、若不棄時、可到寒舎拝茶、納還船銭。」許宣道、「小事何消掛懐。天色晩了、改日拝望。」説罷、婦人共丫鬟自去。
許宣入涌金門、従人家屋檐下到三橋街、見一個生薬鋪、正是李将仕兄弟的店。許宣走到鋪前、正見小将仕在門前。小将仕道、「小乙哥、晩了那裡去。」許宣道、「便是去保叔塔焼𥯃子、着了雨、望借一把傘則個。」将仕見説、叫道、「老陳、把傘来与小乙官去。」不多時、老陳将一把雨傘撐開、道、「小乙官、這傘是清湖八字橋老実舒家做的、八十四骨、紫竹柄的好傘、不曽有一些児破、将去休壊了。仔細、仔細。」許宣道、「不必分付。」接了傘、謝了将仕、出羊壩頭来、到後市街巷口。只聴得有人叫道、「小乙官人。」許宣回頭看時、只見沈公井巷口小茶坊屋檐下、立着一個婦人、認得正是搭船的白娘子。
許宣道、「娘子如何在此。」白娘子道、「便是雨不得住、鞋児都踏湿了。教青青回家取傘和腳下。又見晩下来、望官人搭幾歩則個。」許宣和白娘子合傘到壩頭、道、「娘子到那裡去。」白娘子道、「過橋投箭橋去。」許宣道、「小娘子、小人自往過軍橋去、路又近了、不若娘子把傘将去、明日小人自来取。」白娘子道、「却是不当、感謝官人厚意。」許宣沿人家屋檐下冒雨回来、只見姐夫家当直王安拿着釘靴雨傘来接不着、却好帰来。
到家內吃了飯。当夜思量那婦人、翻来覆去睡不着。夢中共日間見的一般、情意相濃。不想金雞叫一声、却是南柯一夢。正是、
心猿意馬馳千里
浪蝶狂蜂鬧五更
金文京『中国小説選』
金文京『中国小説選』
金文京『中国小説選』
方氏之拠浙東也、毎歳元夕、於明州張灯五夜。傾城士女、皆得縦観、至正庚子之歳、有喬生者、居鎮明嶺下。初喪其偶、鰥居無聊、不復出遊、但倚門佇立而已。十五夜三更尽、遊人漸稀。見一丫鬟、挑双頭牡丹灯前導、一美人随後、約年十七八、紅裙翠袖、妍妍媚媚蹁躚投西而去。生於月下視之、韶顔稚歯、真国色也。神魂飄蕩、不能自持、乃尾之而去、或先之、或後之。行数十歩、女忽回顧而微哂曰、「初無桑中之期、乃有月下之遇、事非偶然也。」生即趨前揖之曰、「敝居咫尺、佳人可能回顧否。」女無難意、即呼丫鬟曰、「金蓮可挑灯同往也。」於是金蓮復回。生与女携手至家、極其歓昵。自以為巫山、洛浦之遇、不是過也。生問其姓名、居址、女曰、「姓符、麗卿其字、淑芳其名。故奉化州判女也。先人既没、家事零替、既無兄弟、仍鮮族党、止妾一身、遂与金蓮僑居湖西耳。」生留之宿。態度精妍、詞気婉媚、低篩昵枕、甚相歓愛。天明辞別而去、及暮則又至。
如是者将半月。隣翁疑焉、穴壁窺之、則見一粉妝髑髏、与生並坐於灯下、大駭。明日詰之、秘不肯言。隣翁曰、「嘻、子禍矣。人乃至盛之純陽、鬼乃幽陰之邪穢。今子与幽陰之魅同処而不知、与邪穢之物共宿而不悟、一日真元泄尽、災眚来臨、惜乎以青春之年、而遽為黄泉之客也、可不悲夫!」生始驚懼、備述厥由。隣翁曰、「彼言僑居湖西、子往訪問之、則可知矣。」生如其教、逕投月湖之西、往来於長堤之上、高橋之下、訪於居人、詢於過客、並言無有。日将夕、乃適入湖心寺少憩。行過東廊、復転西廊、廊尽復得一暗室、則有旅櫬、白紙題其上曰、「故奉化符州判女麗卿之柩」。柩前懸一双頭牡丹灯、灯下立一盟器女子、背上有二字曰金蓮。生見之、毛髪尽豎、寒慄遍身、奔走出寺、不敢回顧。是夜借宿隣翁之家、憂怖之色可掬。隣翁曰、「玄妙観魏法師、放開府王真人弟子、符篆為当今第一、汝宜急往求焉。」明日、生詣観內。法師望見其至、驚曰、「妖気甚濃、何為来此?」生拝於座下、具述其事。法師以朱書符二道授之、令其一置於門、一懸於榻、仍戒不得再往湖心寺。生受符而帰、如法安頓、自此果不来矣。
一月有余、往袞繡橋訪友、留飲至酔、却忘法師之戒、逕取湖心寺路以回。将及寺門、復見金蓮迎拝於前曰、「娘子久待、何一向薄情如是。」遂与生俱入內廊、直抵室中。女子宛然在坐、数之曰、「妾与君素非相識、偶於灯下一見、感君之意、遂以全体事君。暮往朝来、与君不薄、奈何信妖道土之言、遽生疑惑、便欲永絶。薄倖如是、妾恨之深矣、今幸得見、豈能相舎。」即握生手至於柩前、枢忽自開、擁之同入、随即閉矣、遂死於枢中、隣翁怪其不帰、遠近尋問。及至寺中停柩之室、見生之衣裙微露於柩外。請於寺中、問之於主僧而発之、死已久矣。与女子之屍、俯仰臥於枢內。女貌如生焉。寺僧歎曰、「此奉化州判符君之女也。死時年十有七。権厝於此、舉家遠去、竟絶音耗、至今十有三年矣。不意作怪如是。」遂以屍柩及生、殯於西門之外。
是後雲陰之昼、月黒之宵、往往見生与女子携手同行、一丫鬟挑双頭牡丹灯前導。遇之者輒得重疾、寒熱交作。薦以功徳、祭以牢醴、庶可獲痊、否則不起矣。居人大懼、竟往玄妙観謁魏法師而訴焉。法師曰、「吾之符篆、止能治其未然。今祟成矣、非吾之所知也。聞有鉄冠道人者、見居四明山頂、考劾鬼神、法術霊験、汝輩宜往求之。」眾遂至山、攀縁藤葛、驀越谿澗、其上絶頂、果有草庵一所。道人凴幾而坐、方看道童調鶴。眾羅拝庵下、告以来故。道人曰、「山林隠士、旦暮且死、烏有奇術。君輩過聴矣。」拒之甚堅、眾曰、「某本不知、蓋玄妙観魏法師所指教耳。」道人曰、「吾老矣、不復下山、已六十余年。小子饒舌、煩吾一行。」即与童子下山、歩履軽捷、逕至西門外、結方丈之壇、踞席端坐、書符焚之。忽見符吏数輩、黄巾帛祆、金甲雕戈、長皆丈余、屹立壇下、鞠躬請命、貌甚虔粛。道人曰、「此間有邪祟為禍、驚擾生民、汝輩豈不知耶?宜疾駆之至!」受命即往、不移時、以枷鎖押女子与生並金蓮、俱到壇所、鞭捶揮撲、流血淋漓。道人河責良久、令其供状。将吏遂以紙筆授之、俱各供数百言。今録其略於此。
喬生供曰、「伏念某喪室鰥居、倚門独立、犯在色之戒、動多欲之求。不能効孫叔見両頭蛇而決断、乃致如鄭子逢九尾狐而愛憐。事既莫追、悔将奚及。」符女供曰、「伏念某青年棄世、白昼無隣、六魄雖離、一霊未混。灯前月下、逢五百年歓喜冤家、世上民間、作千万人風流話本。迷不知返、罪安可逃。」金蓮供曰、「伏念某殺青為骨、梁素成胎、墳隴埋蔵、是誰作俑。而用面目機発、比人具本而微。既有名字之称、可乏精霊之異。因而得計、豈敢為妖。」
供畢、将吏取呈。道人以巨筆判曰、「蓋聞、大禹鋳鼎、而神斂鬼秘、莫得逃其形、温嶠燃犀、而水府竜宮、俱得見其状。惟幽明之異趣、乃詭怪之多端、遇之者不利於人、遭之者有害於物。故大厲入門、而晋景歿、妖豕啼野、而斉襄殂。降禍為妖、興災作孽。是以九天設斬邪之所、十地分罰悪之司。使魑魅魍魎、無以容其奸、夜叉羅剎、不得肆其暴。矧此清平之世、坦蕩之時、而乃変幻形軀、依草附木、天陰雨湿之夜、月落参横之辰、嘯於梁而有声、窺其室而無睹。蠅営狗苟、羊狠狼貪。疾如飄風、烈若猛火。喬家子生猶不悟、死何恤焉、符氏女死尚貪淫、生可知矣。況金蓮之怪誕、仮盟器以成形、惑世誣民、違条犯法。狐綏綏而有蕩、鶴奔奔而無良。悪貫已盈、罪名不宥。陥人坑従今填満、迷魂陣自此打開、焼燬双明之灯、押赴九幽之獄、沉淪陰臀、永無出期。、
判詞已具、主者奉行。急急如律令。即見此三鬼、悲啼躑躅、為将吏駆而去。道人払袖入山。明日眾姓往謝之、不復可見、止有草庵存焉。急往玄妙観訪魏法師、而審問其故、其法師則已病暗啞、不能言矣。